トレ・ビアンdays

40代・アラフィフ女の貧乏脱出計画

先生のお気に入り。

コロナコロナで予定がコロコロ変わってしまいますね。

 

そんななか、SNSで知り合った女性とお会いしてきました。

私と同世代の、アマチュアのジャズシンガー。

彼女はわりとSNSの投稿に気合を入れる人で、わざわざそれ用の撮影要員が必要みたいなのね。

(いや私も必要なんですがね!自撮り下手なんで)

古いデジタル一眼レフを持って撮影しにいったわけです。

彼女の最寄り駅まで。

 

したらね。

待ち合わせ場所に来ないの!

しかも音信不通なの。

いや、つい先日彼女のライブに行ったことはあるんですが、ふたりで会うのは初めてなんですよ。

良く知らない人間が来ない、連絡もつかないって・・・なんというか不気味な状況でしたね。

なにかの罠にかかったんじゃないかと思ったくらいです(笑)

考えても考えてもなんの詐欺だか分からないんですけど。

 

とにかくきょうび、駅で一時間もひとを待つなんてことないですからね。

遥か昔の学生時代とかを思い出してしまいました。

あの頃は駅には掲示板があって「先に行く」とか「ドコソコに居る」とか書きこめたんですが・・・もはや携帯ありきの時代にはそんなものすらないのです!

携帯が通じないとなると、その頃より不便なわけですよ。

二時間もかけてはるばるやってきて、ああどうしたらいいの、何処に行けばいいの?

(余りに家同士が遠くて、待ち合わせの30分前には着いてしまった)

 

けっきょく待ち合わせ時間前後で合計1時間くらい律儀に立ち尽くした挙句、近辺を散歩してみることにしました。

私が待ち合わせ場所を勘違いしたのかしら?他にも駅の出口があるのかしら?とか無駄なことを考えて・・・。

 

すると・・・駅を出てすぐ、教会の立て看板が見えました。

その教会は、先日亡くなった私の恩師が牧師として赴任していたところ・・・。

徒歩10分くらいのところにあると分かったので、てくてくと向かいます。

ちょうど日曜日なので、礼拝があり、誰かは居るはずなので。

途中、古い船宿や、神社や、真っ赤な橋があり、いかにも東京の下町って感じ。

東京でもあまり来たことがないエリアだったのですが、いいところだな、と思いました。

 

教会に着き、おそるおそるベルを鳴らすと、牧師さんが開けてくれました。

その教会に私の先生が赴任していたのは、もう20年も前のことで、その後は海外の邦人向け教会に赴任していたのですが、教会とは最後まで交流はあったようでした。

死の直前まで海外から便りを書いていたくらい。

その手紙の宛名を見せていただいた瞬間、涙が止まらなくなりました。

紛れもなく、ああ、紛れもなく先生の字だったからです。

お芝居みたいに泣き崩れる私に、牧師さんがティッシュと椅子をすすめてくれました。

 

私は・・・先生のお気に入りでした。

天才だと手放しで絶賛されていました。

(思えば先生は見る目が無かった)

どれくらい酷い贔屓の引き倒しだったかというと、ほぼ白紙で答案を出しても100点がもらえるくらい。

問答無用の大のお気に入り。

天才の無言には凡人の凡百の縷言より価値があるとでも言わんばかりに。

 

私の当時の恋人はその贔屓引き倒しに嫉妬し、腹を立て、礼拝の場で自分が登壇したとき(特定の日は宗教委員会の生徒が交代で説教をすることになっていた)、その先生を面罵しました。

その後、先生は学校を辞め、牧師になりました。

登場人物は全員女なので・・・色々はしょった拙い語りで申し訳ないですが、まあ、子供の時間(噂の二人)的な感じを読み取っていただけたらと思います。

何もできずにその顛末を傍観していた私は・・・まるで、まるで、高木ブー・・・じゃなくて、えーっとなんだ、卑怯な風見鶏とでもいいましょうか。

その罰として、先生に絶賛されていた才能を世に発揮できず、不遇な一生を送ることになりました(過去形かよ)

 

そして私は30年ぶりに先生の字を目にするのです。

たった10文字ほどの宛名書き。

涙でそれは増殖し、答案にびっしり端正に書き込まれた私(の才能)への先生のラブレターが全て蘇ってくる。

放課後呼び出されたこと。

先生の授業中、他の本を読んでいてすら褒められたこと。

「とんでもなく才能があるわ、あなたには」

 

・・・どうして私はもっと早く先生に連絡をとらなかったのでしょう?

どうして先生の住居を兼ねるこの小さな教会にも、海外の教会にも会いにいかなかったのでしょう?

(私は先生が赴任する国のすぐ隣に留学していた)

その後悔をもうひとりの「先生のお気に入り」さん(要は同窓生)に送ったら、こんな返事が返ってきました。 

 

からだ なくなれば 自由自在。

狐さんが 呼んでのぞめば 
空から 一瞬で 読まれるはず。 
でも 感想を伝えたくて
うずうず なさっている のかも 

若い苦難のとき守られた、
あの時代の たねが 
根付いて 芽吹いて 
育って… 
かたちを 生み出して 
世に。
なによりの、よろこびでしょう

継がれた、希望・・・

残る念いも もろともに
狐さんの さらなる情熱に
変わるのだろうと
想っています 

 

 

 

 

 

 

・・・全てがそんなきれいごとではないと思いますが、美しい言葉に多少慰められました。

今時珍しい「待ち人来たらず」現象のせいで、死後一か月も経たないうちにこの教会に来ることになったのも、先生が私を呼んだのかもしれません。

 

 教会から戻り、帰宅するべく電車に乗ってしばらくすると、その待ち合わせの女性から連絡がありました。

二度寝しちゃってた。戻ってきてくれ~!このままじゃ私、最悪じゃん!」と。

うん最悪だよ、あなた、と思わないでもなかったですが、すごすご戻りましたよ。

とりあえず詐欺や罠じゃないのか、真相を確かめたくて(笑)

結果的にその人は、二度寝しちゃっただけの、普通に良い人でした。

彼女の部屋で美味しいジンジャーティーを入れてもらって、温まり、私のうちにあるのとほぼ同じ漫画コレクションを見せてもらい(要は気が合う!)、いろんな話をし、撮影もしたあと、焼肉も驕ってもらっちゃった。

あと、可愛いフェイクファーのコートと可愛い中国茶セットも頂いた。

最高にトレ・ビア~ン!な日曜日になりました。

 

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